宗教学を知る本

逸品モノのカテゴリーで『現代と宗教がわかる本』を薦めた。
なかなか良く出来た宗教(学)の副読本として使えると。

では、教科書的な本はどのようなものがあるのか。
個人的にお勧めできる入門書を3冊ピックアップしてみた。選定の条件として、学界の評価がある程度固まっている、現在においても入手が容易である、一冊の価格が3000円を超えないという制限を設けた。

脇本平也 『宗教学入門』 講談社学術文庫
岸本英夫(編) 『世界の宗教』 原書房
棚次正和・山中弘(編著) 『宗教学入門』ミネルヴァ書房

脇本平也氏の『宗教学入門』は文庫でページ数もあまり多くなく(約340P)、安価である。
特定宗教の観察より、宗教を俯瞰することに重点が置かれており、平易な文章と相まって入門書にふさわしい仕上りとなっている。惜しむべきは、文庫版故の制約か、図版が少ないということだろうか。

岸本英夫『世界の宗教』は初版が1965年と少々古いが、宗教の概論から始まり下記の個別宗教について重点が置かれ解説されているのが特色である。
古代宗教、ユダヤ人の宗教、キリスト教、イスラーム、インド圏の宗教、仏教、中国圏の宗教、日本人の宗教を扱っている。

棚次正和・山中弘 『宗教学入門』は、これまでの2冊とは趣きが異なる本だ。
一言で言えば、宗教学を更に学びたい人向けの本と言える。様々な論文が紹介されており、次のステップへと進む良い指南書となると思う。


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宗教と現代がわかる本

世の中には、専門教育を受けた人からすると「?」となる一般向け本が跋扈している。
「宗教」の本もまた然り。

そんな中で、他人にもお勧めできる本は本当に数少ない。
今回紹介する『宗教と現代がわかる本』は数少ないお勧め本である。
ちょっとこれから宗教(学)について学んでみようか、という人に「サブテキスト」として丁度良い感じだと思う。一応足を突っ込んだ人間からすると、あくまでサブで、メインは学術的に評価の定まった本を薦める。(一例を挙げるならば、岸本 英夫著『宗教学』など)
一般に評価の定まった本となると事象の情報が古いので、宗教の「今」を知りたい人にはもってこいである。値段も内容・量(300ページ超)の割りには格安の1冊1600円である。
2007年版の初版1刷の帯には「宗教を知らないと問題の本質は見えてこない」や「アカデミズムとジャーナリズムから「宗教」がわかる最高の執筆陣」の文字が並んでいる。少々煽りすぎの気もするが、これ位しないと一般書では売れないのかもしれない。

発行形態は書籍ながら年刊で実際には、書籍名の最後に発行年が西暦で入る。2007年春から発行され、2007年版はその年の夏に佐野は本を手に入れた。これまでの一般向け宗教本の定石を打ち破る学術書の色合いが濃い本書が、毎年平凡社という良い意味で普通の出版社から出し続けれるのか疑問に思い、最初の数年間はその真面目すぎる内容ゆえに絶対続かない判断していた。(失礼)
だが、ネットの書評でもある程度の評価を得られており、今回無事5冊目が出たので安心して紹介できる。

内容は特定事象に対しての巻頭特集と各宗教分野からのテーマ・リポート、去年の宗教界を振り返るデータの構成となっている。特集は、
 2007年 特集設定は無し。論点として「慰霊と追悼」「宗教教育」「皇位継承」「生命倫理」
 2008年 宗教と医療
 2009年 皇室と宮中祭祀
 2010年 宗教と映像メディア
 2011年 信仰と人間の生き方
と宗教と現代がどう関わるのか、興味深い論考や対話が収められている。
執筆は主にジャーナリストや宗教学者が担当しているが、テーマ・リポートのページでは標準で、一人4ページとコンパクトに要点が収まっているので隙間時間に読むことができる。無論、その字数では十分に事象を説明できる容量ではない場合は、欄外でレファレンスの紹介をしている。この辺りの専門書との橋渡しがこの書籍が上手な所でもある。
ちなみに最新刊である2011年版の発行日が3月11日であり、特集との関係は偶然とはいえ凄いと個人的に思う。

『宗教と現代がわかる本 2007』の巻頭に編集責任者である渡邊直樹氏が「刊行にあたって」の言葉を寄せている。この言葉が本書をよく表しているので一部抜粋して紹介する。
なお、全文はamazonのページに掲載されている。

 〔前略〕
 しかし、日本では宗教について学ぶ機会を持たない人がほとんどのため、これらの問題〔佐野注:日常生活から生命科学や政治レベルまでの宗教との関わり〕に直面しても、きちんとした理解も説明も議論もできないままでいるのではないでしょうか。その間に、精神的な空虚さを感じている若者たちを吸収しようとする動きや集団も見え隠れしています。テレビの中では「霊能者」番組が相も変わらず高視聴率を稼ぎ、雑誌では「占い」が人気をよんでいます。オウム真理教教祖の麻原死刑判決が確定しましたが、オウム事件から私たちはいったい何を学んだのでしょうか。
 現代の日本人の宗教に対する意識は、狭義の宗教には無関心、組織としての教団には違和感を持ちながらも、広い意味での宗教文化、あるいは精神文化への関心は高まっているようです。戦後の日本は、宗教について議論することや、精神的なものについて教育の中でとりあげることをタブー視してきました。私たちが心の中に抱く精神的なもの・宗教的なるものへの関心にまともにこたえ、宗教についてさまざまなアプローチをしてオープンに語るための場を提供することが必要だと考え、この本を企画いたしました。
〔後略〕

本企画がこれからも安定して刊行できることを願いつつ、一般書として素晴らしい品質を保持しているので「逸品モノ」に推しておく。


北陸本専5 始末

将来参加予定の北陸本専に視察を兼ねて一般参加。

当日はこの季節には珍しく台風が本土を襲うという残念な天気。
自宅から金沢方面への交通アクセスが劣悪なので下道が雨量制限で通行止めとならないか肝を冷やしましたが、遅刻しつつもなんとか会場に到着できた。北陸本専の公式ページの作りが素晴らしく、駐車場から殆ど迷わずに一直線で会場入りすることができたのは幸い。土砂降りの中で必要以上に土産の紙袋を濡らさずに助かった。雨で強度が低下し、底が抜ける恐れのある紙袋をあの日の天候で渡すのは、配慮不足だった。申し訳ない>渡した方
天候からか、若干の欠席サークルあり。伝聞によると去年は閉会時に交通機関が雨で止まるなど大変だったらしい。
会場の雰囲気も和んでいて、スタッフを含め参加者の質が高いことが伺える。ただ、サークルの机が少々小さくて弱々しいのが気になった。佐野としては都産業貿易センターの机が大きさ・強度がありディスプレイで心配する要素が無くて素晴らしいと思う。あの机はちょっと奥行きがありすぎる気もするが…。
結論としては来年はスケジュールが整えばサークル参加したいと思った。

あと、以前からお世話になっているサークルさんやマスコミ関係のサークルさんとお話したが、いずれも地震・原発の話題が話に出る。あの日を境に世界が一変したのだと改めて思い知らされる。
個人的には敦賀のプラントに関係がある人がいるので、原発問題は他人事ではなかったり。

金沢の都市部における神社を巡ったり、石川県立図書館に寄ったりして帰宅。
一応、裏日本最大の都市ということで、九段北の築土神社や山王の日枝神社のように近代的に整備された神社が多いのかと思っていたら、都市のど真ん中に社叢が素敵な神社を見つけて思わぬ収穫。
サークルさんと話題になった某有名神社(情けであえて社名は伏せるが、金沢市より上の方の神社)にも参拝することが出来たが、ネットで詳細なレポートを公開すると関係各所よりクレームが入るのが怖いので伏せる。色々と勉強になりました、とだけ書いておく。

以下極めて個人的余談。
なお、今回参加の最大の懸念事項であった雨量だが、公式記録によると同日夜には通行止め発動値の80%まで上昇した。ここ一年で何度か雨量制限で通行止めを食らったり、アンダーパスの制限ゲートをトラック積載のユンボが破壊して通行止めで帰れなくなるなどの経験があるので、関係各位におかれては新幹線よりバイパス道路の整備をお願いしたい。(切実)
元々、在来線が経営分離で質が落ちるのが分かっているのに何故新幹線を推進するのか佐野には理解できない。高齢化社会にこそ公共交通機関が必要なのでは。
あと、分離後の日本海縦貫線(大阪から琵琶湖脇を通り、日本海沿岸を北上し、青函トンネルを経由して札幌まで繋がる優等列車や貨物輸送の大動脈)をどうするかも不明確だし。


囲い込み

有名パソコンソフトで高価な製品といえば、Adobe社の製品が思いつく。
業務で使う分には経費で落ちるので懐には痛くないが、個人で使おうとすると結構な金額になる。学生の頃から安価な価格で体験を提供して将来へ繋げるビジネスモデルはソフトウェア一般に言えるが、Adobeの製品クラスになると価格差が酷いと感じる人も多いのではないだろうか。
最新のCS5.5のMaster Collectionとなると正式版と学割版で75%、約30万円程金額が違ってくる。Adobeさん、…と思ってしまうのは佐野だけではあるまい。

一方でMicrosoftも負けていない。
開発系ソフトのVisual Studio 2010などは学割で定価の1割でパッケージ版が買える。
多少入会の手続き等が面倒だが、DreamSparkを使えば、無料でVisual Studioが使える。定価で10万円以上するソフトが実質無料になるのだから、Microsoftも凄い。他にも無償提供されるソフトの一覧を眺めていると、Windows Server 2008R2など、定価で10万円を超える高額ソフトが何本かある。
ただ、DreamSparkで提供されるシリアルキーはパッケージ版とは違い、ライセンス認証に制限があるなど、デメリットもある。

とここまで書いて、両者ともBSAのメンバーだということに気がついた。


日経サイエンス

佐野は大学こそ文系学部だったが、サイエンスが好きな人間である。
そんな人間なので科学系の雑誌は世間一般に比べて多く読んでいる。日本で科学系の雑誌というと有名どころでは「Newton」がある。これは中・高校生位でも読めるほど、易しく書かれている。
ややマイナーな雑誌としては、「日経サイエンス」がある。この雑誌はScientific Americanの翻訳論文が基本なので、ある程度(理系大学教養レベル)の知識がないと読み辛い所がある。あと、東京化学同人の「現代化学」があるが、一般書店で扱いが殆どないのが残念。

そんな「日経サイエンス」から興味を引いた記事を紹介。

2011年1月号より、ハッブルを超えて ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡。
天文学に輝かしい記録を残してきたハッブル宇宙望遠鏡。さらに上を狙うジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)計画が地上での最終段階を迎えている。
打ち上げ制約から宇宙空間で命ともいえる主鏡を展開するという野心的な計画である。また、JWSTは地球と太陽のラグランジュポイント2に展開されるため、あまりに地球から遠く、有人での修理や改良といったメンテナンスが困難である。このような技術的課題をどう克服していくか、非常に興味深い。

2011年2月号より、正念場迎えるマラリアワクチン。
日本でマラリアは遠い存在だが、世界レベルで見ると脅威を振るっている病の一つだ。
マラリアは寄生虫によって発生する病気だ。ワクチンの開発が成功すれば、世界で始めての寄生虫に対するワクチンとなる。他に生ワクチンのような方法をとる研究チームや媒介する蚊に抗体を作らせるという斬新なアプローチも紹介されている。
実験者自らマラリアに意図的に感染してみて、アプローチの結果を判断するという、ちょっと日本人には理解されないような検証方法を実行しているチームが存在していることには驚いた。

2011年6月号より、国史が語る千年前の大地動乱。
今回の震災と類似が指摘されている貞観地震。六国史の一つである日本三代実録に記された記録からその実態を探る記事である。日本三代実録という、どう考えてもニッチな本に読み下し本があるのはこの記事を読むまで知らなかった。個人的には、日本三代実録の写本が本文の写真として記事内で使われたのが残念。歴史を扱っていた人間の感覚からすれば、校訂の入った國史大系の方が優れていると思うのだが、やはり活字本では写真写りが良くなかったのだろう。

一冊1400円と一般向け雑誌の中では若干高い分類に入る「日経サイエンス」だが、「Newton」に物足りなさを感じている人にはおススメである。


カテゴリ説明

このブログ「蒼天の記憶」の簡単なカテゴリ説明。

・コンピュータ
 パソコンやiOS、ガジェットの情報など。趣味全開です。

・万年筆・文具
 趣味の万年筆ですが、たまに実用的な情報も。 
 万年筆に触ったことが無い人にはとっつき難いかも…。

・同人活動
 同人サークル「旧市街通信社」の関連内容はこちら。

・学びの道
 「人生是学び、身銭を切って学べ」
 佐野の興味ある分野(特に宗教学・神道)のエントリー。

・日々の記録
 そのまま。日々の雑記です。

・日本の伝統
 神社や伝統について。区分は「学びの道」「雅楽」と曖昧です。

・逸品モノ
 佐野が特に一押ししたい商品紹介。

・雅楽
 ひたすら雅楽。龍笛と篳篥についてですが、初心者なので成長の記録。


電波男

本エントリーは本田透著の『電波男』とは全く内容が関係ありません。念のため前述。

人間の叡智を集結して作られた筈の原子力発電所が事故を起こしてまもなく2ヶ月。
色々なメディアで放射線や放射能のことが語られてる。これを機に前々から暖めていたネタを披露することにする。

放射線と一口に言っても、アルファ線やベータ線、ガンマ線など様々な種類がある。さらにその実態はヘリウムの原子核であったり、エネルギーの違う電磁波(電波)であったりと実に多様である。
今回、重要なのはガンマ線である。これは大雑把にいって電磁波の一種である。
ここまでが、今回のエントリーを理解するのに必要な知識である。

数年前、諸事情があって脳血流シンチグラフィを受けた。
脳血流シンチとは超大雑把に言って、脳の機能、特に血流量を画像化する医療技術だ。これに対して、CTやMRなどは脳の形自体を基本的には見ている。
この脳血流シンチにはトレーサーと呼ばれる薬品を使うが、一般的にはガンマ線を放出する99mテクネチウムを静注する。そして血流によって脳に薬品が到達した頃合を見計らってガンマカメラというガンマ線を検出する機材で画像化する。
検査を受ける本人はMRのように数十分間横になっているだけなので、比較的楽な検査である。特にすることもないので、今佐野の脳から放射線が沢山出ているんだろうな、などと考えていた。そういえば、放射線といってもガンマ線なので電磁波、つまりこれは脳から電波が出ている状態である。
まさに、電波男な状態だなぁ、などと暇な検査中に考えていた。

以下、余談。
検査前にトレーサーを注射器で静注するのだが、注射器から放射線が出ているので放射線防護上、外見が普通の注射器とは違っている。注射器の筒が遮蔽効果のあるタングステンのシールドに覆われていて、注射薬の内容量を確認する窓というか溝には鉛ガラス。
ちょっと物騒な注射器が使われています。
実際の注射器の画像はコチラ


映画でみる宗教

2月から原稿があまり進んでいない。
「映画でみる宗教」が想定以上に曲者だったことに着手してから気付く。

最短で映画1作品のレビューを書こうとすると、
 該当作品の選定、1時間。
 映画作品の視聴、約2時間。
 宗教的背景の確認、最低2時間。
 レビューの草稿作成、最低1時間。
で、少なく見積もっても6時間はかかる。A5判1ページに6時間というのは漫画サークルでは想像できる。だが、文字だけの1ページに6時間は色々とキツイ。


大震災と宗教者

東北を支援しようという輪は日本はもとより、世界にまで広がりを見せている。
殆ど報道はされていないが、宗教界からも支援が広がっている。

しかし、支援主体が宗教団体の場合、教団名を大っぴらにすると、逆に怪しまれたり利用されるのでは、と被災者が思ってしまう事が少なくない。大抵の場合は、そういった事情を配慮して所属をアピールすることなく、ただ一支援者としてサポートに回ることが多い。
一支援者としての支援となると、○○教団は何を支援した、という情報がマスメディアから流れなくなる。唯一統制のとれた情報源は各々の教団が出している広報媒体だが、これをチェックするには相当の労力を要する場合が多々ある。

ちなみに阪神淡路の時は、新宗教・新新宗教団体の活躍が素晴らしかった。
特に公共団体がまだ動いていない初動時期においてヘリをチャーターして食料物資を空輸する教団・大規模な医療チームを派遣する教団…などである。ある程度支援が進むと、地味に仮設トイレを清掃する教団も現れてきた。伝統宗教は、と言うと残念ながら十分に活躍できなかった。そもそも社寺が被災しており、自分の事で手一杯、他人のサポートまで出来ないという状況が多かったと聞く。

翻って、今回の震災。
情報技術はあの当時から大幅に進歩した。各教団の支援状況がほぼ一日更新で分かるサイトが現れるなどした。阪神淡路の時よりはかなり情報入手は易しくなってる筈である。所轄庁には、十分情報収集をお願いしたい。それが公益法人を監督する務めであるように思う。

無事復興し、その時宗教者は何をしたかを確かに歴史に残すために。


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