神宮の配信はしょぼい。
そんな声が聞こえた。
まもなく、伊勢の神宮の式年遷宮における最大の重儀「遷御の儀」が斎行される。
当日は原則として、関係者しか神域に入れない。そこで、伊勢神宮式年遷宮広報本部はこの遷御の儀を動画配信することにした。だが、その配信が貧弱であるとSNSで声が上がっている。
確かに、配信を視聴できるのはWindowsXP以降のOS、クライアントはWindowsMediaPlayer11以降のみの環境だ。MacOSX、iPhone系のiOS、Andoroid等では公式には視聴ができない。さらに不親切な事に視聴に必要となる最低帯域が明示されていない。1昔前の標準的な動画配信サイトに戻ったような印象さえ与える。
さて、ここで話を少し変えて1ページの技術レポートがある。著作はIIJのエンジニアの方。
IIJという会社に馴染みが無い方に簡単に説明すると、日本で初めてインターネットの商用化を進めた法人向け企業である。
「より多くのスクリーンに映像を届ける配信ベストプラクティス」
話を戻そう。
今回のケースで理想は、マルチプラットホーム視聴対応かつストリーミング配信。(DRMと制作外注の問題は技術的に趣旨から外れるので検討外)
上記のレポートを参考にすれば前者は対応できそうである。問題は後者。生中継の要素もあるかもしれない。(註)そうなるとエンコードはほぼリアルタイムで、低遅延処理が要求される。配信サーバへの通信回線もしっかりした物(速さより確実に低遅延で通信できるもの)が予備系込で最低2系統は必要だ。配信サーバの負荷予想は難しい問題だ。Twitterなどリアルタイム性の強いSNSの到来で、負荷にムラが出る可能性がある。さらに多種類のプロトコル要求を捌かなければならないから、WindowsMediaPlayerに限定した時に比べて、配信サーバへの負荷もより大きくなるだろう。
The last resort?
幸いなことに、動画の配信サービスはインターネット上で大人気だ。障害耐性もそれなりにある。もちろんマルチプラットホームに対応しているものもある。
国内でストリーミング配信ができる大手でも、Youtube Live、USTREAM、ニコニコ生放送などがある。ただ、これらのサービスは広告があったり、不適切なコメントを排除するコメントモデレーションが必要であるなど、今回のような公共性の強い用途には使いにくい。ではどうするか。結局、豊富なシステムリソースとノウハウを持った商用配信系サービス(例えば、Brightcoveなど)を利用するしかないのではないだろうか。
まとめ。
つまるところ、どこまで本気で配信しようと考えているか、が対応プラットホームを分ける。
ぼくのかんがえた最強の配信、みたいなのを考えると、明らかに金と人の負荷が大きすぎる。戦略的に切り捨てるというのもアリな判断ではないか。もちろん、今回のケースの特殊性から言えば、後日に切り捨てられた側へのフォローアップは必要だと思われる。
上記の理由により、WindowsMediaPlayer限定は致し方なしと佐野は考える。個人的にはMacOSXには対応して欲しかったが…。
高品質な配信にはお金がかかる。でもインターネット上のコンテンツは無料という不可解な空気が漂っている。
今までの遷宮がそうであったように、これからの遷宮も伝統と最新技術の狭間で行われていくのであろう。
今回のその端的な一例がインターネット配信なのかもしれない。
註:
完全なリアルタイムの生放送ではなく、遅延送出システム(Wikipedia)を介した配信を想定。
言い訳とか:
意図的に宗教の聖なる部分は無視しています。今回は純粋に配信技術のみです。
実際に各配信プロトコル・配信サービスの技術資料を斜め読みしたが、当エントリー自体が鮮度が命な内容の為、解説はできませんでした。
自分でも認める位、内容が薄いです。完全に泥縄だったのが悪さをしています。後日談を書くかも。