神宮の配信はしょぼいのか?

神宮の配信はしょぼい。
そんな声が聞こえた。

まもなく、伊勢の神宮の式年遷宮における最大の重儀「遷御の儀」が斎行される。
当日は原則として、関係者しか神域に入れない。そこで、伊勢神宮式年遷宮広報本部はこの遷御の儀を動画配信することにした。だが、その配信が貧弱であるとSNSで声が上がっている。
確かに、配信を視聴できるのはWindowsXP以降のOS、クライアントはWindowsMediaPlayer11以降のみの環境だ。MacOSX、iPhone系のiOS、Andoroid等では公式には視聴ができない。さらに不親切な事に視聴に必要となる最低帯域が明示されていない。1昔前の標準的な動画配信サイトに戻ったような印象さえ与える。

さて、ここで話を少し変えて1ページの技術レポートがある。著作はIIJのエンジニアの方。
IIJという会社に馴染みが無い方に簡単に説明すると、日本で初めてインターネットの商用化を進めた法人向け企業である。
より多くのスクリーンに映像を届ける配信ベストプラクティス

要約すると、現時点での動画配信の最適解はAdobe Flash Video。iOSには、Apple HTTP Live Streaming。Andoroidには、Flash Video。但し、比較的新しい機種はFlashに対応していないので、独自アプリなど要対策、となる。ここまで複雑だと、自分がこれらのプラットフォームに対応した配信サイトを構築しろ、と言われたら頭が痛くなってしまう。最近では、オープンソースの配信プレーヤーもあり、一から作るのに比べれば楽にはなったが面倒な作業だ。

話を戻そう。
今回のケースで理想は、マルチプラットホーム視聴対応かつストリーミング配信。(DRMと制作外注の問題は技術的に趣旨から外れるので検討外)
上記のレポートを参考にすれば前者は対応できそうである。問題は後者。生中継の要素もあるかもしれない。(註)そうなるとエンコードはほぼリアルタイムで、低遅延処理が要求される。配信サーバへの通信回線もしっかりした物(速さより確実に低遅延で通信できるもの)が予備系込で最低2系統は必要だ。配信サーバの負荷予想は難しい問題だ。Twitterなどリアルタイム性の強いSNSの到来で、負荷にムラが出る可能性がある。さらに多種類のプロトコル要求を捌かなければならないから、WindowsMediaPlayerに限定した時に比べて、配信サーバへの負荷もより大きくなるだろう。

The last resort?
幸いなことに、動画の配信サービスはインターネット上で大人気だ。障害耐性もそれなりにある。もちろんマルチプラットホームに対応しているものもある。
国内でストリーミング配信ができる大手でも、Youtube Live、USTREAM、ニコニコ生放送などがある。ただ、これらのサービスは広告があったり、不適切なコメントを排除するコメントモデレーションが必要であるなど、今回のような公共性の強い用途には使いにくい。ではどうするか。結局、豊富なシステムリソースとノウハウを持った商用配信系サービス(例えば、Brightcoveなど)を利用するしかないのではないだろうか。

まとめ。
つまるところ、どこまで本気で配信しようと考えているか、が対応プラットホームを分ける。
ぼくのかんがえた最強の配信、みたいなのを考えると、明らかに金と人の負荷が大きすぎる。戦略的に切り捨てるというのもアリな判断ではないか。もちろん、今回のケースの特殊性から言えば、後日に切り捨てられた側へのフォローアップは必要だと思われる。
上記の理由により、WindowsMediaPlayer限定は致し方なしと佐野は考える。個人的にはMacOSXには対応して欲しかったが…。
高品質な配信にはお金がかかる。でもインターネット上のコンテンツは無料という不可解な空気が漂っている。

今までの遷宮がそうであったように、これからの遷宮も伝統と最新技術の狭間で行われていくのであろう。
今回のその端的な一例がインターネット配信なのかもしれない。

註:
完全なリアルタイムの生放送ではなく、遅延送出システム(Wikipedia)を介した配信を想定。

言い訳とか:
意図的に宗教の聖なる部分は無視しています。今回は純粋に配信技術のみです。
実際に各配信プロトコル・配信サービスの技術資料を斜め読みしたが、当エントリー自体が鮮度が命な内容の為、解説はできませんでした。
自分でも認める位、内容が薄いです。完全に泥縄だったのが悪さをしています。後日談を書くかも。


ブログ再開

諸事情により、当blogも同人活動も中断しておりましたが、余裕が生まれてきたのでボチボチ再開いたします。


近代デジタルライブラリー

国立国会図書館が進めている、非来館型サービスの一つに近代デジタルライブラリーがある。
主に、太平洋戦争以前の著作権保護期間が満了した資料をデジタル化し、インターネット経由で自由に閲覧できるサービスである。インターネット上から閲覧できるこの手のサービスは良くて目次までの公開が多い中で、本文へのアクセスの道を開いたことは評価できるであろう。
この近代デジタルライブラリー、ここまでの道程は決して平坦なものではなく、異体字を包括的に検索できるようにするための改修が公開と並行して行われるなど、まさに手探りという言葉が相応しかった。

さて、この画期的な近代デジタルライブラリー、実際にWebブラウザでアクセスしてみると、思いの外使い勝手が宜しくない。
ページ内の拡大や縮小、ページ送りなど基本的な閲覧機能は用意されているものの、紙と同じような直感的な操作が出来ないのが原因であるように思われる。ではどうすれば改善されるのであろうか。佐野は、タッチパネルに対応したUIを追加導入することを提案したい。例えば、拡大・縮小はピンチアウト・ピンチインがその代替となるであろう。ページ送りはスワイプが相応しい。
今までこうした、タッチパネル搭載ディスプレイは一部の業務用製品を除くとスマートフォン・タブレット端末に限定されてきた。大きくても5インチクラスのスマートフォンや7~9インチが主流のタブレットで、見開きでA4サイズを超える資料を閲覧するのは正直言って苦痛と感じやすいように思われる。
そのような現状で、意外なデバイスが現れた。Windows8のタッチ操作対応ディスプレイである。モバイルデバイスと比較にならない広い画面、マウスとの併用などそのポテンシャルは大きい。
一方で、公共性が強い図書館で特定のデバイスやOSを優遇することに否定的な向きも多いだろう。それらが足かせとなって開発できないのであれば、ならばAPIを公開して外部からツールが生まれるのを待つというのも、悪くない戦略のように思う。

以上、利用するにあたってのUIの問題を紹介した。
次に挙げるのは資料の問題である。

近代デジタルライブラリーではその趣旨から、著作権の保護が満了した物が多い。
著者が個人で図書の場合、満了となるのは没後50年経った最初の1月1日である。
従って、一般人の感覚から言えば「かなり古い」資料となる。これらの資料は劣化を防ぐためにマイクロフィルム・マイクロフィッシュに変換されていた物も少なくない。佐野が利用する資料を見る限りでは、マイクロフィルム・マイクロフィッシュを引き延ばした際に特徴的なノイズが含まれている物が存在した。どうやら一部の資料は原本を直接スキャンしているのではなく、あいだにマイクロ資料を挟み込んでデジタル化しているようだ。
原本からでなく、マイクロ化したメディアを通すことで確実に資料の解像度が低下しノイズが増えていく。原本が印刷技術が未熟だった時代の物ならばなおさらだ。
せっかく、コストを投入してデジタル化しても、肝心の資料が文字の掠れや潰れで読めなければ、価値は半減してしまう。
元々、資料のマイクロ化には保存スペースの削減と資料保全という意味合いがあったはずだ。前者はともかく、後者については、デジタル化は専門の業者に外注が進んでいる。一般人とは異なり、扱いの知識がある業者ならば、原本を使っても、損傷を受けるリスクは十分に小さいように思われるのだが、いかがだろうか。

近代デジタルライブラリーは、国会図書館が推進する「壁のない図書館」を実現するための十分強力なツールとなることは間違いない。
デジタル社会に適応したサービスになって欲しいと心から願う次第である。


HGWとVPNサーバ

佐野は自宅にNTTが提供するフレッツ光ネクストを引いている。
一緒にひかり電話も契約している関係で、NTTからONU一体型ホームゲートウェイ(HGW)であるPR-400NEをレンタルしている。(実情は、買取制度が無いのでレンタルを強制されているのだが…)

さて、このHGWであるPR-400NEに3月のバージョンアップでVPNサーバー機能が追加実装された。
最近はフリーのWiFiスポットも増えてきたが、セキュリティは残念な所が多い。佐野は、十分な暗号化が行われていないWiFiスポットを利用する際は
VPNを利用したいと前から思っていた。しかし、昨今の電力事情をを考えると安易に24時間稼働のサーバーを自宅に置くわけにもいかず、かといって業務用のVPN搭載ルーターは技術面・金額面で入門者である佐野にとって敷居が高い。そんな時にHGWにVPNサーバー機能が実装されたと聞き、早速試してみることにした。以下は簡単な導入の為の覚え書き。

1.HGWのバージョンアップ
HGWはデフォルトで自動でファームウェアをバージョンアップする設定になっている。
しかし、様々な制約により新しいバージョンが公開されても、すぐにNTTが管理する全台のHGWに適用される訳ではなく、徐々に更新がかかるようになっていると聞く。この為、新バージョンが出てからしばらくの間は手動で更新する必要がある。
NTT東日本西日本とも専用ページでファームウェアを公開しているので、これをダウンロードして適用させる。

2.VPNサーバー機能の設定
最新ファームが適用された当初では機能が無効になっている。
「詳細設定」より「VPNサーバ設定」のページに入り、有効にする。
VPN機能を使うセッションはPPPoE周りを変更していなければ、「接続先1」を。
共有鍵は英数字20文字で任意に決めることができない仕様。再生成は可能。HTMLのソースに鍵が平文で埋め込まれているので、コピーする際はソースを表示させると都合が良い。
続いて、アカウントの作成。
VPNアカウントの設定からユーザー名、パスワードを設定。ユーザー名はアルファベットのみ、パスワードは8文字以上が要求仕様になっている。

3.VPNクライアントの設定
今回はクライアントにiPhoneを使った。iOSは5.1.1。
iPhoneのVPNでは、L2TP、PPTP、IPSecが利用できる。しかし、HGWに実装されているVPNはL2TP/IPSecのみ。従って、設定アプリではL2TPを選択。
「説明」には単なる表示名なので、自分が分かる適当な名前を。(例:自宅NW)
「サーバ」にはISPから割り振られたIPアドレスを入力。佐野はDynamicDNS(DDNS)を利用しているので、割り当てされたドメイン名を入力。光回線なので、停電・メンテナンスによる回線断でもない限り同じIPアドレスを長時間割り当てられる場合が多いと思うが、接続の確実性を求めるならDDNSは最低導入したい。HGWにはDDNSのクライアント機能が無いので、別途用意する必要がある。手頃なソフトとしては、DiCEが有名であろう。
「アカウント」には先ほど作成したVPNアカウントのユーザー名を入力。
「RSA SecurID」は2要素認証が提供されていないのでオフ。
「パスワード」はVPNアカウントのパスワード。
「シークレット」にはHGWの設定画面で表示される事前共有鍵を入力。
プロキシなどは必要に応じて設定。VPNをオンにして、ステータスバーにVPNのアイコンが表示されれば接続は成功。当たり前といえば、当たり前なのだがHGW配下で無線LAN機能を使っている時には、VPN機能は使えない。

HGWにはこの他に、ISPから割り当てられたIPアドレスが変更になった際にメールでアドレスを通知する機能があるので、必要に応じて設定。


僕と3.11

あの忌まわしき東日本大震災からまもなく、2年。
人々から少しずつ、震災の記憶が消えつつあるように感じる。
以下はあの日を忘れないように、記した個人的なメモである。

本震の揺れが中部地方を襲った時、佐野は室内で作業をしていた。
あまり地震が発生しない地域なので、珍しいな、というが第一印象だった。急激な加速度で揺さぶられるというよりは、水面に浮かべた木の葉の如く、ゆらりゆらりと揺れる感じだった。天井から吊り下げられた照明器具が小刻みに揺れていて、目視でも揺れていることが確認できた。その程度の揺れなので当然、地震動による損害は無し。
暫く経ってから、NHKを見ると緊急番組が放送されていて、その内容から大変なことが発生したと悟る。

夜。
本震と余震の概況を知ろうと、Hi-net 高感度地震観測網にアクセスするも、サーバーダウン。後の報告によると、一般向けサービスは数ヶ月のスパンで止めていたとのこと。
Twitterなどを使い情報収集。当時の呟きログを参照すると、関心があったのはITを利用した被災者支援・原発事故だったようだ。この時点では原発事故に関しては(今思えば)かなり楽観的な呟きが多い。知り合いに原発関係者がいたことも影響しているだろう。肝心の被災地の呟きは「気仙沼の火災」だけで少ない。あまりにも甚大すぎて情報が挙がってこなかったのが影響していると思われる。
「日が昇る(ことによって甚大な被害が見えるようになる)のが怖い」という呟きが印象的。

数日後。
電力の大消費地である首都圏を中心に電力不足が深刻化。秋葉原では計画停電対策にバックアップ用のUPSが売れ始める。
ここ中部エリアでも節電ムードが広がりを見せる。店舗によっては照明の間引きをやっており、薄暗い。この流れは徐々に拡大してゆく。
この頃から全国的に買占めが始まる。被災地から離れたここでも、カップラーメンなどすぐに食べれる食品を中心として、陳列棚が空になる。佐野はオイルショックは経験していないのだが、習った買占めとはこういうものかと体感する。日が経つにつれて、買い占められる食品が菓子など頓珍漢な方向に進行し呆れる。
CiNiiで災害関係の学術論文を閲覧しようとしたが、節電のためにサーバーが稼働を停止。商用サービスのmagazineplusは平常稼働。

1週間後。
相変わらず、報道は震災についての内容ばかり。この頃から海外視点の震災情報を入手したいと思い、CNNのWebサイト、Al Jazeeraのストリーミングなどを見始める。
Googleが震災直後からサービスを開始した安否確認サービス、「Person Finder」のデータ処理が追いつかなくなり一般のボランティアの募集を開始する。内容は被災者情報の文字起し、Person Finderへのデータ入力など。もともと崩し字の解読は得意だったので、Google Mapsなどを被災地の地名確定の参考にしつつ、作業に参加。しかし、被災地から送られてくる携帯電話やスマートフォンで撮影された粗い画像しかないデータの解読に苦心する。扱っている情報の特性上、判断は慎重にならざるを得ず、そこそこの割合で画像が判読不能だった。

さらに数日が経過。
輪番停電と余震という情勢不安の為、首都圏の大学を中心に学位授与式・祝賀会を見合わせる流れが広まる。後輩からの話では母校はそれなりに被災地・首都圏から距離が離れているということもあり、予定通り開催。
23日、東京都の浄水場で暫定基準を超える放射性ヨウ素が検出されたとの報道が流れる。ミネラルウォーターは被災地支援のために品薄だったが、容量を問わず買占めがここ中部でも発生。完全に棚から姿を消す。東京から十分距離がある場所では意味のない行動に苦笑するしかない。

4月。
自粛という言葉がそこかしこで目立つ。
花見や春祭りなどといったハレのイベントが開催中止。同時に被災地へのボランティアの機運が高まる。佐野は諸事情により参加できないので、額は小さいが義捐金を出す。

5月。
世界中がその進展を見守っていた福島第1原子力発電所事故。5月になっても明るいニュースは聞こえてこない。
そうした不安心理もあり、様々なガイガーカウンターが販売されている。一部の製品では非常に性能が怪しいものが、3~5万円という高値で取引されている。
趣味のウラン鉱石収集の道具という実益もあるので、アメリカのショップからソ連製(ロシア製ではない。冷戦時代の代物)ガイガー・ミュラー管SBM-20を何本か購入。震災前は一本US$7程度で取引されていたものが、US$25~35まで高騰。早速、評価回路を組み上げ、空間線量を計測する。当たり前すぎるが、事故後でも増加は見られない。手持ちのウラン鉱石など放射線源(特にβ線源)には良く反応する。


コミックわんだーらんど2 始末

表題の通り、サークル参加したコミックわんだーらんど2

当日はこの冬、一番と言っても過言ではない寒波が中部エリアを襲った。
佐野も会場に向かう途中の凍結した橋で車がスリップしそうになった。危ない。
なんとか、地を這うようにして会場となる市民プラザに到着。車社会の富山県中心部だけあって、会場の地下に駐車場が完備。天候が荒れやすい冬の北陸の即売会において、外を経由せずに会場入りできるのは有難い。会場入りするまでは、貸ホール室であるマルチスタジオで開催するのだと思っていたが、オープンスペースのアトリウムで開催。一長一短があるので、どちらが同人誌即売会でベストな会場かは難しいと思う。
お隣のスペースには、北陸本専6と同じく横浜新聞研究所さん。

今回の頒布物は散々告知した通り、「電子書籍リーダーは学術用端末の夢を見るか」と「宗教文献の探し方」。
評論畑は4sp、3サークル。やはり、富山という地方都市では評論のサークル自体が少ない。頒布数は参加サークル数と比較すれば健闘したと思うが、やはり扱っているモノがモノだけに動きは鈍い。
この手のモノを扱っていると、高頻度で本気な質問を投げかける人と出会う。今回の質問は宗教関係の図書について。折角、電子書籍端末をサークルスペースで用意しているのだから、それを活用すれば良かったと後になって思う。自宅の学術専門書を全て持ち歩けるようになるのは何年後になるのやら…。このような人との交流は、非常に刺激的であり楽しいものである。(下手をしないか冷や汗モノなのだが)

即売会終了後、交流会。
このような試みは面白いと思う。一部の都市即売会では、居酒屋で交流会を開催していると聞く。富山という車社会ではアルコールの提供は実質的に不可能に近く、こういう即売会会場での交流が現実的なところだろうか。佐野は壊滅的に人の顔を覚えるのが下手なので、名札や名刺があると有難かった。

即売会後は、大人しくあまり寄り道をせずに帰宅。
昼の気温で路面状況も改善されていた。冬の即売会では前泊の必要性を感じた一日であった。

次回の開催は9月の1日。
まだ先なので参加するかは未定。前向きに検討中。

高知の「おもうつぼ」と山梨の桔梗信玄飴、それぞれお土産、ありがとうございました。

事務連絡:会場で宗教学入門書について佐野に尋ねられた方、会場で紹介した入門書の他に参考文献集として、下記のものを示しておきます。

近藤光博 著 読んでおきたい宗教論(第11版)
現代の宗教研究を俯瞰できる論文リスト。各論文の要点がピックアップされており、使い勝手が良い。

棚次正和・山中弘(編著)『宗教学入門』ミネルヴァ書房 2005
基本的な入門書だが、第5章の「宗教学を学ぶ人のための基本文献」は本書の特徴と言っても良い。宗教学を学ぶ上で、必ず名前は知るという古典的な名著について1冊1ページの配分でコンパクトに書評が掲載されている。また附録の「現代の宗教研究一〇〇選」もオススメ。


コミックわんだーらんど2 告知

別エントリーでも記載していますが、日も近づいており、改めて告知。

2月17日に富山市で開催される、「コミックわんだーらんど2」にサークル参加します。C-9にてお待ちしております。
なお、当日は一般参加者入場開始の11:00~即売会終了の15:00まではサークルスペースに居る予定です。会場へは自家用車での移動を予定しており、降雪具合によっては会場到着が遅延する場合があります。遅延等、会場不在が見込まれる場合には、随時Twitterアカウントでアナウンスします。
以下2種類のコピー誌を頒布します。色物サークルですが、どうぞよろしくお願いします。

新刊
「電子書籍端末は学術用端末の夢を見るか」
各社から販売されるようになった電子書籍リーダー。
e-inkディスプレイを搭載したモノクロ端末は各社から販売されているが、中でもamazonのKindleへの注目度は高い。
論文データで使われることが多いPDFファイルの閲覧として、本当に使えるのか。あわせて自炊と呼ばれるスキャンの基本的な知識を紹介する。また、人文科学系の主要オンライン学術サービスの紹介。
デモ端末として、デザインの異なる論文データの入ったKindleをサークルスペースに持っていきます。

既刊
「宗教情報の探し方」
去年発行した版の改訂版。
日本は宗教色が豊かな国と言われている。しかし、日本の宗教教育の水準は残念ながら低いと言わざるを得ない。
ここでは、基本的な宗教文献を入手するために一般人が無料(ないしは安価)で利用できるオンラインサービスや専門図書館を紹介する。
(佐野 註:内容はほとんど去年と変わりませんので、再度求める価値は低いかと。)


2013年 活動予定

参加する予定のイベントは下記の通り。
いずれも評論で参加。

コミックわんだーらんど 2
2月17日 富山市民プラザ(富山県富山市)
サークルスペース確定(C-9)。路面の降雪具合によっては、会場に到着が遅れる可能性あり。

北陸本専7
イベントの詳細未定。例年通りならば、5月に金沢市で開催か。
スタッフブログによると、今年(2013年)の開催は見送り。次回は2014年開催予定。(参考リンク

COMICFACTORY20
6月2日 浅間温泉文化センター(長野県松本市)
信州エリアの即売会には初参加。
サークルスペース確保確定。

新刊
「電子書籍端末は学術用端末の夢を見るか」
各社から販売されるようになった電子書籍リーダー。
e-inkディスプレイを搭載したモノクロ端末は各社から販売されているが、中でもamazonのKindleへの注目度は高い。論文データで使われることが多いPDFファイルの閲覧として、本当に使えるのか。また、快適に閲覧するためのTipsを紹介。
デモ端末として、デザインの異なる論文データの入ったKindleをサークルスペースに持っていきます。

既刊
「宗教情報の探し方」
去年発行した版の改訂版。

追記(2013/02/04):
年明けからの多忙と厄介な慢性疾患を罹患してしまい、コミックわんだーらんど2で新刊を出せるか、微妙な状態となっております。
また、既刊の「宗教文献の探し方」も刊行してから約1年が経過しており、掲載情報の劣化を肌で感じております。まず、既刊本の改訂に最大限のリソースを振り分け、時間・肉体的に余裕があれば新刊の方と計画しています。
新刊を期待している方には大変申し訳ないのですが、斟酌していただけると幸いです。
なお、6月の長野には新刊を持っていきます。

最終更新:2013/05/24


同人誌と情報化の波

く、腐ってやがる。

これが、5月に配布した同人誌を手入れした偽らざる感想である。
何が腐っているのか。掲載した情報が劣化しているのである。

5月に頒布した同人誌は、非常に硬い内容にもかかわらず、想定以上の数が出た。
それからまもなく、半年が経とうとする。情報技術の進歩は相変わらず目を見張るもので、その速度故に犬の成長に譬えてドッグイヤーとも言われている。近年、ICTの進歩の恩恵を受ける図書館業界もまた、目まぐるしく変化している。一例を出すならば、国立国会図書館サーチが連携検索としてCiNii Booksのデータも検索できるようになった。また、5月15日からは、所蔵する博士論文をデジタル化し、インターネットで閲覧できるようになるサービスも提供されるようになった。(註) 今や情報は施設や機関を超えて利用されるようになったのである。
このような情勢の中で、可能な限り、鮮度の高い情報を提供しようと思い、あえてオフセット(オンデマンド)印刷ではなく、コピー誌として頒布した。それでも直前まで手入れした同人誌が半年で腐臭を放ちつつある。これに対して、どう対処するのが望ましいか、ここ暫く考えてきた。
5月配布の同人誌の8割を占めていた各種情報ページ(調査の方法、機関、利用案内)の割合を低下させるために、図書館訪問記といった比較的劣化の速度が遅い情報を新規に書き入れるのが望ましいとの結論に至った。このようにすれば、更新の要求は緩やかなものとなり、今までは劣化を警戒して行わなかった、オフセット印刷も可能になるだろう。
情報ページの大幅な手入れ、施設訪問記の書き下ろしで、新訂増補という名を書名につけれる仕上がりになるであろう。初蔵出しは次回の北陸本専を予定している。

註:
インターネット経由で閲覧ができるのは、著作権消滅・著作権者から公開の許諾を得た論文のみ。それ以外の論文は、目次のみをインターネットで公開。


残念な電子図書館 NII-Electronic Library

日本を代表する学術論文検索サービス、CiNii Articles
佐野も便利で学部生の頃から使っている。
一部の論文は、PDFデータとして無償ないしは有償でオンライン公開されおり、検索結果からシームレスに閲覧できる。ただ、このサービスが残念な仕上がりになっている。

公開されている論文がPDF内に画像として保存されているのだ。
著作権保護のためか、提供されるPDFファイルはパスワードによって保護されている。許可されているのは文章の「印刷」のみだ。
結果として、論文内を検索することができない。正規に論文内を検索しようと思えば、一度紙に印刷したものをOCRにかけるという人的、物的に資源を浪費する方法を採らなければならない。
従って、利用者が後から各々のAcrobatに搭載されているOCR機能を利用することは許されていない。提供されているデータは高品位な画像データだけに、OCRによる電子化がなされていないのは残念である。PDFの設定によっては、OCRによる文字を埋め込んだまま、本文のコピーを防ぐということもできる。もし、電子化データの流出を防ぐという意味で保護をかけ、OCRをしていないのであれば、それは実質的に無意味な行為である。世界にはPDFのパスワード保護を無効化するソフトが市販されており、これを使えば、無劣化でAcrobatのOCR機能などが利用ができてしまうからだ。
根本的に防ぐにはDRMの導入しかないが、学術的なサービスには相いれないだろう。

根源的な問題には、現行著作権制度が学術著作物に求められるであろう著作権保護と合致していない点がある。
雑誌に掲載された論文は一本全部を複写できるが、論文集になるとそれが出来なくなる、などというのはその最たる例であろう。

話が逸れた。
もう一つ、PDFファイルには気になる点がある。
サービスを利用したユーザー名、日時、IPアドレスがメタデータとしてPDFに埋め込まれているのだ。
家庭などのパーソナルな場所からのアクセスでは問題ないのだろうが、学校や企業からでは場合によってはIPアドレスが漏れるとまずい場合があるだろう。これも、著作権に配慮したものと推定できるが、それならPDFにユニークなIDを割振り、提供サーバーにログを保存しておけば済む話だ。


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