佐野
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石上神宮とあれやこれや
創作同人サークル「WISTORIA」の天羽さんが編集を務める神社本「じんじゃらん」シリーズの最新刊、『じんじゃらんシティーズ』に「石上神宮」を寄稿しました。(実は既刊の『マニアックじんじゃらん』の方にも寄稿しています)
京都と奈良、どちらも歴史ある神社が多数ある地域ですが、佐野は断然、奈良派。
京都の街、全体的に観光客が過密すぎて、ゆっくり回れないのが嫌いの原因なんですが…。平日の朝夕はイイ感じに人が少ないのですが、平日に旅行の予定を組んでも、面白そうな博物館・美術館系のイベントが皆無。そんな訳(?)で、気がつけば訪問回数は奈良県の方が圧倒的に多くなっていました。そんな奈良の神社の中から選んだのが、このお社。
最寄りの天理駅からは、駅前から伸びる通りをひたすら直進すれば神社のある布留地区に到着するので、道迷いは無いでしょう。そして、その途中で天理教の影響力の大きさを実感するはず。
開放されている境内は広大、という訳でもないので、じっくり派でも1時間もあれば十分、いろんな所を見て回れるかと。佐野的には、せっかくここまで足を運んだのであれば、周囲の散策もオススメ。次ページにある天羽さん渾身の「山之辺の道 MAP」を手に歴史ある土地を半日~1日かけて、ぶらり歩くのも良いと思います。古墳・遺跡など、ごく普通の住宅地の中にぽつんと存在して、辿り着くのが大変な史跡もあるので、訪問先へのアクセス方法の事前確認は必須。プライバシー侵害等の諸問題は抱えつつも、Googleストリートビューがアクセスの下見に便利です。
さて、石上神宮といえば、七支刀。神社そのものより、むしろこっちの方が有名では、と思われるほど有名な国宝です。
独特の刀の形、銘文の解釈、製法の謎…。
近年の研究上のトピックといえば、鋳造法でどうやらあの刀を再現できそう、という点でしょうか。
これまで、鍛造説と鋳造説がありましたが、これにより鋳造説がやや有利になったか、というのが個人的な印象です。初版では、鍛造説を採ってしまいましたが、現状では両者とも決定的な証拠が出ていない、というのが本当のようです。製法に関しては、他の銘文の研究などに比べ、あまり研究が進んでいないという感じを受けます。
現物が国宝指定を受け、気軽に調査をするのが不可能という側面もあります。それでも、同じく古代史で有名な国宝の稲荷山古墳出土鉄剣(同書P.23に部分イラスト有)は様々な考古学的解析(e.g. 蛍光X線分析による鉄の不純物調査)が行われているのとは対照的と思うのは佐野だけでしょうか。
近郊に春日大社や大神神社といった超メジャー級の神社がある故に、歴史・神社マニア以外の注目度が低いこの地域の神社に訪れる人が少しでも増えてくれれば、と思う次第です。
個人的には、天理~桜井~飛鳥と巡るのが好きです。
なお、奈良県全体を対象としたウォーキング情報は奈良県観光局が運営する「歩く・なら」がひと通りの情報が揃っていて便利です。
イミテーション・ゲーム
「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」を観た。
原題は「The Imitation Game」。明らかに駄目駄目な日本語訳でB級映画感が漂ってしまっているのが実に惜しい。
中規模のシネコンのレイトショーの回だったが、200人近く収容できるスクリーンにも関わらず、観客は自分を入れて7名だけ。自分を除く6名はどうやらカップルのようで、この回に限らずチューリングに興味がある、というより主演のカンバーバッチ影響で観に来ている人が多い気がした。
主人公は稀代の数学者、アラン・チューリング。
映画は彼の功績の1つである、ドイツ軍が使用していた暗号機「エニグマ」の解読をテーマとした作品である。本作は、少年時代、解読作業が行われた第二次大戦中、そして戦後という3つの時代を行き来しながら進行していく。
=== 以下には若干のネタバレ有りにつき、未見の方は注意 ===
まず意外なのは、作品の鍵を握るエニグマによる暗号化・復号化について、映画の冒頭にさらっとローターとプラグの話が出てきただけで、解説らしい解説はない点だ。彼の開発した解読装置、bombeの動作原理は複雑なので説明がないのは致し方ないにしろ、エニグマの基本動作のはそれほど複雑ではないので、解説は是非欲しかった。簡略化した説明だけでもあれば、この解読作業がいかに面倒で厄介なものであるかが、よく伝わっただろうと思うと残念である。もっとも、この辺りの采配は商用映画という括りの中で娯楽映画寄りに振るか、あくかまでも史実に忠実かという微妙な点なので一概に良い悪いと言えないのが難しいところではある。
同様に、作中に出てくる置換式暗号の類型であるビール暗号やシーザー暗号についても解説は無い。
と、上映開始直後からチューリングの映画として観に来た人には物足りなさを感じさせる構成となっているが、一方で、チューングに詳しい人にしか分からないギミックも作中に散りばめられている。
分かりやすい例として、チューリングが必死の形相で田舎の砂利道を駈けているカットが作品の何ヶ所かに挿入されている。作品全体やカットの前後の流れからすれば、特別意味のあるカットではない(と思う)。チューリングはオリンピック選手並みの俊足ランナーだった、という事実から作られたカットだと思うが、制作陣のチューリングに対するリスペクトが滲み出ているように思う。
また、協調性も求められる暗号解読作業で孤立してしまう所、首相に直訴するカット、いずれもチューリングらしさが出た名演技といっていいだろう。
戦争が終結し、最後にこれまでの成果を解読チームの皆で火で燃やし、消し去るシーンがある。
Webの映画評論ポータルサイトでは、このシーンを背景に語られる言葉が意外で感動した、というコメントを多々目にした。確かに、演出方法として巧いやり方ではあると思うし、それに続く言葉が容易に想像できる自分でも目頭が熱くなった。だが、あの表現を文字通り受け止めてしまうと、コンピュータ黎明期を知らない人は誤った評価をしてしまうだろう。この辺り、もう少し丁寧なフォローが欲しかったというのは贅沢すぎるだろうか。(もっとも、彼の功績が礎となったのは間違いないのだが…)
作中で繰り返し出てくる台詞「時として誰も想像しないような人物が 想像できない偉業を成し遂げる。」
これがこの作品を通して伝えたかった最大の事ではないだろうか。
最後に、私の愛読書の一節を引用し、短評の終わりとしたい。
チューリングは数学や情報科学の天才であっただけではなく、30代からマラソンに目覚め、1948年のロンドン・オリンピックの候補になれるほどのすばらしい記録を出しているアスリートだった。人と目を合すこともできない繊細な性格の持ち主だったかもしれないが、決してひ弱な学者だったのではなはく、強い意志と目標を持って、誰も超えられなかった道をひたすら駆け抜けていったのだ。
B・ジャック・コープランド(著)・服部桂(訳)「訳者解説」『チューリング ―情報時代のパイオニア』NTT出版 2013 p.410
追記:
字幕で気になったのがmachineに対する和訳である。作中では「マシン」と統一されていたが、文意から理論的なロジックを含んだ言葉と物理的な機械としての意味の言葉として分けた方が観客にとって分かりやすいのではないかと思った。例えば、B・ジャック・コープランド(著)・服部桂(訳)の前掲書ではこの点について配慮されている。
Reboot…
2013年夏、体調を崩してしまい、最低限の生活を維持するのが精一杯、とてもブログを更新する余裕などなく、すっかり放置してしまいました。
あの夏の悪夢のような日々からもうすぐ2年。幸いにも、ほぼ完治し、そろそろ中断していた趣味も再開したい、と思っています。
(投薬終了後、検査値が要治療以下正常値以上のグレーな値が出続けていて、検査通院が長引いていた、というのが真相ですが…)
活動再開、第1回目として、従来頒布していた同人誌の2015年4月改訂版を文学フリマ金沢に出店します。
同人誌記載の対象サービスの改変期と同時に並行作業中の別案件が忙しくなり、全面改訂は難しいかも、という情勢ですが、直せる分は少しでも直したいと思います。
ブログ統合について(お知らせ)
過去、旧市街通信のブログは「xrea」上で公開してきました。
下記の理由により、
- 独自ドメインを取得
- ブログシステムのセキュリティ関係における諸般の事情に対応するため
当ドメインでの公開に全面的に移行します。
現在、全てのエントリーの移行の準備を進めており、移行完了までは、xrea上の旧サイトで閲覧することができます。(作業上の理由により、新たにコメントを付けることはできません。)
従来提供してきたRSSも継続して提供する予定です。
移行にあたり、旧サイトのリンクが無効になるなど、閲覧者の方にはご迷惑をおかけする事もあるかと思いますが、ご理解の程、よろしくお願いします。
また、移行に伴って、ブログシステムがMovable Type系からWordPressに移行します。
追記:移行作業が完了しました。旧サイトは当分の間、アーカイブとして公開しておく予定ですが、今後更新されることはありません。
GeNii、サービス終了
国立情報学研究所が提供する学術コンテンツポータル、GeNiiが2014年3月31日17時をもってサービスを終了することがアナウンスされた。
CiNii(論文情報)、WebcatPlus(大学図書館の蔵書検索)、KAKEN(科研費助成事業DB)、NII-DBR(学術研究DB・リポジトリ)、JAIRO(機関リポジトリ)の5つのサービスを横断的に検索することができるのが目玉だった。GeNiiのサービス終了の告知には、「サービスの利用状況および昨今の学術情報流通環境を鑑み」としか記述されておらず、何が原因となったのかは、外部から窺い知ることが出来ない。
ただ、提供しているサービスの中でも、比較的需要があると思われるCiNiiやWebcatPlusは4月1日以降もサービスを継続するようなので、総崩れにならずひとまずは安心といったところだろうか。
佐野が個人的に気になった文言として、「昨今の学術情報流通環境を鑑み」という点がある。
確かに、国立情報学研究所が果たしてきた役割は大きい。無償で最先端の知へのアクセスを提供し続けている事に対しては、ただただ感謝するのみだ。
一方で、電子書籍や電子ジャーナルを中心として商用サービスも少しづつではあるが動き出している。ただ、これら商用サービスは県立などといった大規模図書館(所謂、第二線図書館)や大学など研究機関向けの価格設定であることが多く、個人で導入するにはまだ敷居が高い。
そのような意味から、サービス終了はもう少し遅くても…、と個人的に思った次第だ。
謹賀新年
新年、あけましておめでとうございます。
旧年中は大変お世話になりました。本年もよろしくお願いいたします。
去年を総括すると、何はともあれ体調の問題。
頑張れば、なんとか社会生活が継続できてしまう程度の微妙な悪さが6月~10月頃まで継続。
従って、同人活動や当ブログは一切手を付けることが出来ず…。twitterで呟いていたのが精々。
さて、正月に他人の病状の話をしてもアレなので、今年の予定など。(あくまで、「予定」ですよ、と)
まず、春~夏までに、新刊を1冊作る予定。
既刊では、基本的な宗教関係文献の探し方とデジタル化済み学術データへのアクセスを扱ってきた。学術界の流れがデジタル化に向かっていることに異議を唱える人はいないだろう。だが、文系(註)、とりわけ文学的な物も扱う宗教研究においては、アナログでデジタル化されていない資料の方が遥かに多い。新刊では、基本的な学術文献の取り寄せ方(主に国立国会図書館の遠隔複写制度を想定)を利用者登録の第1ステップから解説。図書館の相互貸借(ILL)も扱ってみたいテーマではあるが、大学図書館等の専門図書館を除く一般の県・市町村立図書館では力の入れ方にムラがあるので、有益な情報を紹介できるか微妙なところだ。
8月が終わるまでに、最低2回は即売会にサークル参加を、とは思っている。が、全国的にも本オンリーな即売会は低調で休会状態なものも多く、今の所、参加予定な即売会は無い。
近場で良質な即売会であった「北陸本専」が今年開催されれば、多少無理をしても参加したのだが、当分白紙とのこと。ぜひ復活を期待しているのだが。
あと、同人関係ではお世話になっている某サークルさんの寄稿同人誌の原稿作成の準備とデータ収集。(まだ先方のサークルさんが告知を出されていないようなので、曖昧な表現に止める)
基本的なデータ類は揃っているのだが、5年前のデータも多く、取材旅行というか現状確認は必要だと思われる。実地が盆地で夏に歩き回るのは大変なので、初夏までには赴きたい。
同人関係で夏の終わりまでは以上のような予定。
熾火になった薪のような病気が悪化しなければ良いのだが…。(数値的には異常なのだが、かといって治療行為は要しないという状態)
註:
佐野、個人としては所謂、文系・理系という意味のない学問の区分には大いに違和感を覚えるのだが。
と、いうような内容のエントリーを松の内には作成したのだが、正月疲れも相まってか、ステータスを「下書き」のままにして公開に変更するのを忘れていた。
幸いか、旧正月という便利な言葉もあるので、闇に葬らずに1月1日付けの設定で公開することとした。
インククリーナーセットを試す
プラチナ万年筆から「インククリーナーセット」なる商品が販売されている。
名前の通り、万年筆に滞留したインクを除去することが出来る製品で、化学作用を利用するため、洗浄液に漬けこむだけという便利な製品である。
佐野も発売から1ヶ月のうちには入手をしたのだが、残念ながら今日まで利用する機会がなかった。
たまたま、残念な保存状態の万年筆を発見してしまったので、簡単ではあるがレビュー。
今回、試験対象になったのはペリカン製「ペリカノ」である。軸がスケルトンで内部のインクの様子が確認しやすいという理由もあり、これを選んだ。
今回のペリカノ、誤って3ヶ月ほど秋の間、車の中に放置してしまった。当然ペン先はドライアップして書けず、カートリッジに半分程残っていた筈のインクもほ
ぼ全量が蒸発・濃縮しているという、実に悲惨な状態になっている。どこまでインククリーナーの力で洗浄できるか、試行の記録である。
まずは、事前処理として首軸を水洗い。
効率よく給排水を行うために、ペリカン純正コンバーターを使用。カートリッジ式万年筆の洗浄プロセスは説明するまでもないので、大幅に省略。
幸い、入れていたインクが色彩雫の「月夜」という染料系だった為に、水だけでもそれなりに落ちるが、スケルトン軸故に、軸の内部で固着して落ちていない所が気になる。また、ペン芯も洗浄で落とせなかった所が何か所か残っている。
ここからは、インククリーナーセットの出番である。まずは、専用洗浄液の用意。
説明書には製品の濃縮洗浄液を10倍希釈して使用すること、となっているので、定量の水道水100mlで希釈。
希
釈した洗浄液は強アルカリ性なので、取扱注意。今回は、洗浄液の化学的安定性維持などを考慮して、PYREXの容器で希釈・洗浄した。電子レンジ対応耐熱
ガラス容器などはPYREXであることが多いので、地方でもさほど難しくなく入手できるだろう。最初は容器の清浄性の観点から、紙コップを利用したが、紙
の継ぎ目から連続的に洗浄液が滲み出してきたので紙コップでの洗浄は止めた方が良いだろう。佐野と同じように滲み出す事例が他サイトで報告されている。
希
釈した洗浄液が用意できれば、後は首軸を沈めておくだけ。説明書によると、程度の軽い汚れならば、2~3時間で洗浄が完了するという。同説明書によると、
想定している洗浄時間は24時間程度のようだ。酷い汚れの場合は、製品に付属の簡易スポイトを使い、ペン芯に洗浄液を循環させると良いらしいが、今回は使
用せず。
今回の試験で興味深かった点の一つとして、水では全く落ちなかった箇所のインク汚れが、洗浄液に浸けた瞬間に浮かび上がってきたこと。数時間後には無色透明だった洗浄液が薄くインク色に染まっていた。
数
時間程度では、まだ固着があったので、24時間放置。少しづつ固着が溶けているがまだ不完全なので、24時間追加。計32時間。さらに24時間、計76時
間。結局、76時間洗浄液に浸したにも関わらず、一部の固着は完全には除去できなかった。洗浄液も放置で、液温が低く活性が低かったのだろうか。説明書に
も「固着は除去できない場合があります。」とあるので、そのようなものと諦めていたが、数日後に新たな発見が。
固着場所をルーペで拡大し
て観察してみると、クラックのようなものが見える。詳細に解析を行った訳ではないのだが、このクラックの微細な隙間にインクが侵入し、今でも固着のように
見えるのではないだろか、という仮説が成り立つ。これならば落ちない・落ちにくい理由も腑に落ちる。
さて、このインククリーナーセット、標準使用5回分で1200円位と毎回のメンテナンスに使える程安くは無い。
しかし、それを差し引いても、長年使い込んで汚れたスケルトン万年筆が新品のように蘇ったことを考えると、なかなかの逸品である。
特に、デモンストレーターに代表されるような、軸の透明感を生かした万年筆には相性がより良いだろう。
一方で、液性が強アルカリという点を考慮すると、ヴィンテージ万年筆や記念モデルといった高価な万年筆を洗浄する際はよく考えて使った方が良さそうである。
結語としては、大変満足する性能を発揮してくれた。惜しむべきは、まだ認知度が低く、文具店の店頭に無い場合があるということと、頻繁に万年筆を使うユーザーでは1梱包5回分は少ないように感じたが、価格の兼合いもあり10回分などの製品化は難しいかもしれない。
当サイトにおけるアクセス制限について
先月より、当サイトへのBOTネット由来と思われるSPAM・adminアカウント等を対象とした不正アクセスが多数確認さてています。
これらのアクセスは一過性ではなく、長時間継続しており、同じサーバ資源を共有している他ユーザ様にも処理速度低下など迷惑が及ぶ事が考えられるため、アクセス制限を実施致しました。
インターネット上の知は全世界の人々に共有・活用されるべし、という信念をもつ佐野にとっては不本意ながらのアクセス制限の導入になります。
今日現在の制限の対象:中国国内のISP、北米大陸の一部データセンターに割り振られたIPアドレス、欧州の特定のISP
サーバのアクセスログより、実際に不正アクセスに使用されたIPを含むネットマスク単位で制御します。このため、同じISPでも制限される場合とそうでない場合があります。
制限されたIPからのアクセスの場合は、HTTPステータスコード「403 Forbidden」を返し、一切の情報の閲覧ができません。
悪質性のある中国以外のアクセス制限に関しては、適宜アクセスログを参照して解除を検討します。
日本国内からのアクセスについては、第三国を経由して閲覧しようとした場合などを除き、影響が出ないよう誤動作防止に努めていますが問題があった場合は、佐野のtwitterアカウントまで連絡をお願いします。
神宮の配信はしょぼいのか?(完結編)
20年に一度執り行われる内宮の遷御の儀は滞りなく終了した。
当ブログでは、この模様の動画配信について考察をエントリーにしていたが、今回はその顛末である。
なお、ここに記載されている内容について、十分に調査した上での公表としているが、正確性については完全には保証できない。
さて、結論から言うと、かなり関係業者が頑張ったのではないかと思う。100点は与えられないにしても、素晴らしいと称賛できる内容であった。
確かに、遷御の時刻に近づくと配信用回線が混み合い、何度か接続をリトライしないと繋がらないという場面も見受けられた。(註1)
一方で、配信用サーバに一度繋がってしまえば頻繁に接続が途絶えるという事もなく、そこそこで安定して視聴することができたのではないだろうか。
また、配信の詳細を知らない人が一見しただけでは、生放送なのか、前エントリーでも触れた遅延送出を利用しているのかは、判断がつかないようだった。この辺りは、十分に進行が練られていた為と思われる。
肝心の内容であるが、画質はビットレートの割によく、暗部再現などもあの条件下では優れていたと判断してよいだろう。雨儀ではなかった、というのも配信にとっては味方した。
音声は、現地で集音したものに各種行事(神事)の解説音声をミックスダウンしたものが用いられていた。諸事情により、解説者の方のプロフィールを知ることが出来なかったが、解説の内容などから、神宮の職員の方かそれに近い人であろうと推測する。(註2)生放送に近い動画配信は遷御の前までで、それ以降は一定時間経過後にストリーミング形式として公開、という形になった。この辺りは宗教の聖性も絡んでくるので、全てを公開というのはなかなか困難を伴うことは想像に難くない。
もともとの、sengu.infoのホスティングがこの業界では有名な(株)かっぺが担当している辺りからも、手堅く安定志向で纏めた、そのように感じた動画配信であった。
それでも、この神社界において動画配信を行う事自体が画期的ではあるのだが…。
付記しておくと、一部Webサイトにおいては、指定視聴環境外のMac OS X + VLC Media Playerで視聴する方法が提示されるなど予想外な展開も見受けられた。
参考までに佐野(中部エリア在住)のパソコンまで映像ストリームをtracerouteにかけてみると、どうやら神戸付近でビジネス向けフレッツサービスにパケットが放出されているようだった。
恐らく一番、盛り上がったであろう東海エリアにおける地上波の主要遷宮関連番組(ニュース枠等短時間を除く)は下記の通り。
三重テレビ(主制作)
19:00~19:30 伊勢神宮式年遷宮「始」
19:30~20:55 お伊勢さん「第10回 中継・内宮 遷御の儀」
三重テレビ制作番組受け 各放送局
19:00~19:54 伊勢神宮式年遷宮「始」
19:55~20:50 お伊勢さん「第10回 中継・内宮 遷御の儀」
NHK総合(放送:北陸・東海エリア)
22:00~22:45 遷御がつたえる日本の心~第62回伊勢神宮式年遷宮~
東海テレビ
25:08~26:38 東海テレビ開局55周年記念 真夜中のお伊勢さん ~遷御の夜に生放送
註:
インターネット環境 フレッツ光ネクスト隼、PR-400系ONU一体型HGW、収容先バックホーンはIIJ。
神社新報社が発行する神社神道系宗教専門紙「神社新報」、平成25年9月23日号第1面によると、配信の冒頭挨拶は田中恆清氏(伊勢神宮式年遷宮広報本部長)、進行・解説役は千種清美氏(作家・皇學館大非常勤講師)と神社本庁職員が務めるとのこと。