着物は何故普及しないのか?
この命題に答えるのは、簡単で意外と難しい。
一言で言うなら、「時代の要請に答えていない」からなのだと思う。
以下は実体験に基づく、和服で暮らすにおいて問題点。
高価であるというのが1つ目の壁。
総中流時代で上向き景気が続いていた昔では、一式は揃えるという物だった着物だが、確実に上向き成長を約束されない昨今の景気状況では一式揃えるのさえ、経済的困難が伴う。化繊の安価な物も生産されていないことはないが、普及しているのは日常的に着物を着る人が利用している程度に留まっている。個人的にも普段着なら化繊でも抵抗はないが、礼装は考えてしまう。
生活様式が西洋化している、のが2つ目の壁。
実際に着物を着て生活してみるとよく分かるのだが、生活様式が着物と合わなくなっている。初心者が袖を引っかけやすい扉が引き戸から開き戸が増えている。また、新築の家では畳敷きからフローリングが増え、着物と相性の良い住環境が減少している。
夏場の酷暑が深刻化しているのが3つ目の壁。
元々、今の和装は今よりずっと夏が涼しかった頃に様式化されたもの。寒さ対策という方向では、そこそこ対策できるが、暑さにはめっぽう弱い。佐野も35度の夏日に白衣と袴で屋外作業をしてダウンした記憶がある。
以上、利用する側から見た問題点を列挙してみた。
実際にはこれ以外にも業界が抱えている問題などがあるが、それは別の機会でも。